就労継続支援B型は、一般企業での就労の難しい方が、自分のペースで働ける場として提供される福祉サービスです。しかし、高校生や大学生でも利用できるのか、疑問に思う方もいるでしょう。
この記事では、就労継続支援が学生でも利用できるケースや、利用が求められる条件、手続きの流れについて詳しく解説します。学校に通いながら就労支援サービスを利用したい方や、卒業後の就労をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
就労継続支援B型とは?
就労継続支援B型は、障がいのある方が自分の体調やペースに合わせて働ける福祉サービスです。一般就労での就職が困難な方を対象としています。
働くことを通して生活リズムを整えたり、社会参加の機会を得たり、将来の一般就労に向けたスキルアップを目指したりと、利用目的は人それぞれです。
B型では雇用契約を結ばないため、最低賃金の保障はありませんが、作業内容に応じた工賃が支払われます。軽作業からデータ入力、清掃など事業所によって多岐にわたる仕事があり、利用者の方はそれぞれの適性に合った作業に取り組むことが可能です。
就労継続支援B型は大学生や高校生でも利用できる場合がある
就労継続支援B型には厳密な年齢制限がありません。しかし一般的には18歳以上の利用者が多く、学生の方はかなり少ないのが実情です。
例は少ないものの、高校生や大学生でも利用が認められるケースは存在します。ただし安易に利用できるわけではなく、学生の本分である学業への影響や、就労訓練の必要性が厳格に問われます。
A型や就労移行支援との違い
大学生や高校生が利用できる可能性のあるサービスに、A型や就労移行支援といった選択肢もあげられます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
| サービス名 | 雇用契約の有無 | 対象者 | 特徴 |
| 就労継続支援A型 | 雇用契約あり | 一般企業での就労が困難かつ、雇用契約に基づいた働き方が可能な方 | 一般就労に近い形で働きながら、スキルアップを目指す |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約なし | 一般企業での就労が困難で、A型や就労移行支援の利用も難しい方 | 働く機会や社会参加の場を提供し、生活リズムの安定や社会性の向上を目指す |
| 就労移行支援 | 雇用契約なし | 一般企業への就職を希望し、訓練を行うことで就職が見込まれる方 | 就職に向けた知識やスキルの習得に向けた支援のほか、職場探しや就職後の定着支援を行う
利用期間は原則2年間 |
それぞれ利用者の状況や目標に応じて、異なるアプローチで支援を行います。就労継続支援A型や就労移行支援と比較すると、就労継続支援B型はより柔軟な働き方を提供している点が特徴です。
ご自身の現状と将来の希望に合わせて、最適なサービスを選ぶことが重要です。
在学中に就労継続支援B型の利用が認められるケース
在学中に就労継続支援B型の利用が認められるケースは多くありません。しかし、以下のような場合に必要性があると判断される場合があります。
- 学校卒業後の就労を見据えている場合
- 学業との両立が可能と判断される場合
それぞれ見ていきましょう。
学校卒業後の就労を見据えている場合
「卒業後も自分の障がいの特性に合った環境で、無理なく働き続けたい」という明確な意思がある場合、その必要性に応じて利用が認められることがあります。具体的には、卒業後もそのままB型事業所での就労を視野に入れているケースです。
在学中にB型での就労に慣れておくことで、卒業後の環境変化によるストレスを最小限に抑えて、社会生活への移行をスムーズに進められます。在学中からB型事業所で働く経験を積むことで、社会とのつながりを保ちながら安定した生活リズムを確立できる点でも、メリットが大きいでしょう。
学業との両立が可能と判断される場合
在学中に就労継続支援B型を利用するケースとして、学校のカリキュラムや本人の学習進度に無理なく組み込める場合があげられます。
たとえば、通信制や定時制の学生であれば比較的自由な時間を利用して通所できるため、比較的利用が認められやすいといえるでしょう。
ただし大切なのは、B型での活動が学業の妨げにならず、生活リズムの安定や社会性の向上といった効果をもたらすと判断されることです。学業との両立が可能かどうかだけでなく、B型事業所の利用によって得られるメリットも重視されます。
在学生がB型事業所を利用する際の流れ
在学生がB型事業所を利用する場合、以下のような流れに沿うことが一般的です。
- 主治医や学校関係者へ相談する
- 居住地の市区町村窓口で利用を希望する旨を伝える
- 相談支援事業所を決定する
- サービス等利用計画案を作成する
- 児童相談所長の許可を取得する
- 障害福祉サービス受給者証の交付を受ける
なお、「児童相談所長の許可」においては18歳未満の学生のみ必要になります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
主治医や学校関係者へ相談する
在学中に就労継続支援B型の利用を検討し始めたら、まず主治医と学校関係者へ相談することから始めます。就労継続支援の利用には、医学的な視点だけでなく、教育的な観点からのサポートが不可欠です。
学校の先生には、学業の状況や通所によって生じる時間的制約や学習面への影響について相談し、理解と支援を得ることが重要です。主治医には、現在の病状や障がいの特性を踏まえ、B型事業所での活動による健康への影響や、どれくらいの頻度や時間であれば無理なく活動できるかなどについて、意見書などの協力を仰ぎましょう。
学校と主治医、両者から賛同を得ることで、市区町村の判断やサービス等利用計画の作成が円滑に進む可能性が高まります。両者と密に連携し、利用に向けた準備を進めることがポイントです。
居住地の市区町村窓口で利用を希望する旨を伝える
学校関係者や主治医への相談を経て、就労継続支援B型の利用を前向きに進められそうであれば、お住まいの市区町村の障がい福祉窓口を訪ねましょう。ここで利用を希望する旨を伝え、現在の状況を説明します。
この際に学生であることや、なぜB型事業所の利用が必要なのかを簡潔に説明できるようにしておくとスムーズです。窓口の担当者からは、サービスの概要や申請に必要な書類、今後の手続きの流れなどについて説明があります。
とくに学生の場合は、利用が認められるケースが限定的です。学生の利用に関する要件や判断基準について、詳細に確認しておきましょう。
相談支援事業所を決定する
相談支援事業所とは、障がいのある方やそのご家族が、地域で安心して日常生活を送れるようにサポートする役割を担う専門機関です。
市区町村から案内された事業所の中から、自分に合った場所を選びましょう。B型事業所の見学の手配や、関係機関との連携もサポートしてくれるため、安心して相談できるパートナーを見つけることが大切です。
サービス等利用計画案を作成する
就労継続支援B型の利用を自治体から承認してもらうためには、サービス等利用計画案の提出が必須です。相談支援専門員は、これまでの相談内容を踏まえ、個別のニーズに合わせた計画案を作成してくれます。
この計画案には、利用する就労継続支援B型事業所の具体的な活動内容、通所日数や時間、達成したい目標、学業との両立を図るための配慮事項などが盛り込まれます。スムーズな移行と安定した継続利用のためにも、本人の特性や希望に合わせた支援内容を策定することが重要です。
児童相談所長の許可を取得する
就労継続支援B型を利用する学生が18歳未満の場合、児童相談所長の許可を得なければなりません。これは児童福祉法に基づき、未成年者の福祉を保護するためです。
相談支援専門員との相談のうえ、サービス等利用計画案が完成したら、市区町村を通じて許可申請を行います。B型事業所の利用がその学生にとって適切であるか、学業や日常生活に悪影響がないかなどが総合的に判断され、許可が下りた場合にのみ利用が認められます。
障害福祉サービス受給者証の交付を受ける
必要な手続きと審査を経て、市区町村によって就労継続支援B型の利用を正式に承認されると「障害福祉サービス受給者証」が発行されます。受給者証には、利用できるサービスの種類や支給量、利用者負担の上限額などが記載されています。
受給者証に記載された内容に基づいてサービスが提供されるため、交付された際に誤りがないか確認しておきましょう。
B型事業所と契約し利用開始する
障害福祉サービス受給者証が手元に届いたら、利用する就労継続支援B型事業所との契約に進みます。契約時には提供されるサービスの内容や緊急時の対応、利用者の権利など、重要事項が説明されます。
説明を受けた際に内容をよく確認し、不明な点は遠慮なく質問しましょう。契約が完了すれば計画に基づき、B型事業所での活動がスタートします。
18歳未満で障がいのある方が利用できる就労サービス
18歳未満で障がいを抱える学生の中には、将来の就労について心配を抱えている方も少なくないでしょう。ここから、18歳未満の方が利用できる可能性のある以下5つの就労サービスについて解説します。
- 就労移行支援
- 就労継続支援
- 自立訓練
- 就労定着支援
- 教育機関でのキャリア教育・進路指導
それぞれ確認していきましょう。
就労移行支援
就労移行支援とは、障がいのある方が一般企業への就職を目指すため、訓練とサポートを提供する福祉サービスです。職業訓練だけでなく履歴書の書き方や面接練習、就職活動のサポート、就職後の職場定着支援まで、幅広いサポートを提供します。
18歳未満の学生でも利用可能ですが、一般的には学校卒業後の就労が見込まれ、かつ学校生活だけでは就職準備が不十分と判断される場合に認められます。PCスキルやビジネスマナー、コミュニケーション能力の向上など、職場で役立つ実践的な訓練を受けることが可能です。
なお、利用期間は原則2年間です。限られた期間で、集中的に就職準備を進めます。
就労継続支援
就労継続支援は、障がいを持つ方が長期的に就労に携わるための支援です。A型事業所は、雇用される形での安定した働き方を求める方に適しており、企業での就労経験を積めます。
一方でB型事業所は、雇用という形にとらわれず、それぞれのペースで無理なく働くことを重視しています。障がいや特性に合わせた社会参加の場を提供しているのが特徴です。
18歳未満の学生においては、B型の方が利用事例は多い傾向です。A型も必要性が認められれば利用は可能ですが、いずれの場合も学生の本分である学業に支障がないことが前提となります。
参考:就労系障害福祉サービスの利用者の支援ニーズ等の実態把握等に関する調査(厚生労働省)
自立訓練
自立訓練は、障がいのある方が地域で自立した日常生活や社会生活を送れるよう、必要な知識や技能を習得するための福祉サービスです。大きく「機能訓練」と「生活訓練」の2種類に分けられます。
機能訓練では、身体機能や精神機能の維持・回復を目指し、身体能力の向上や体調管理などに取り組むのが特徴です。一方、生活訓練は家事や金銭管理、コミュニケーションスキルなど、日常生活を送るうえで必要な能力の向上を目的とします。
18歳未満の学生の場合、とくに生活訓練が役立つでしょう。 たとえば1人暮らしを視野に入れた家事の練習や公共交通機関の利用方法、金銭管理の基礎などを学ぶことで、卒業後の自立した生活への準備を進められます。
就労定着支援
就労定着支援は、障がいのある方が一般企業に就職したあとも、安定して長く働き続けるためのサポートを提供するサービスです。 就職がゴールではなく、職場に定着して充実した職業生活を送ることを目的としています。
具体的な支援内容は、職場での人間関係の悩み、仕事内容や体調管理、賃金や待遇に関する相談などです。定期的な面談や企業との連携を通じて、スムーズな職場適応と定着を後押しします。
18歳未満で就労移行支援などを経て就職した学生にとって、卒業後の社会生活における心強い味方になるでしょう。
教育機関でのキャリア教育・進路指導
教育機関で行われるキャリア教育や進路指導は、障がいのある高校生や大学生にとって身近に利用できる支援の1つです。一人ひとりの障がいの特性や個性、希望に合わせた個別相談を通じて、必要な情報や多岐にわたる選択肢を提示してもらえます。
また卒業後の就職を見据え、基礎的なビジネスマナーや実践的なスキルアップ支援などが行われることもあります。早期から興味や適性、障がいの特性を踏まえた支援を受けることで、具体的な進路を検討する手助けとなるでしょう。
まとめ:就労継続支援B型は18歳未満の学生でも利用が認められるケースがある
就労継続支援B型において、学生の利用は例外的なケースです。学業との両立が可能であることや、卒業後の継続就労を見据えている場合に認められます。
そのほかにも、就労移行支援やA型など、さまざまな就労支援サービスがありますが、それぞれの特徴を理解し、状況や目標に合った選択をしましょう。
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