就労継続支援B型で仕事がない状況を改善するには?利用者ができることも紹介

就労継続支援B型事業所で「仕事がない」という状況に直面していませんか?仕事量が減少すると、事業所の経営だけでなく、利用者の方のやりがいにも影響しかねません。

仕事がなくなる原因は、事業所の営業戦略や地域の特性など多岐に及びます。この記事では、仕事がない状況に陥る原因を深掘りし、B型事業所が取り組むべき具体的な対策を解説します。

事業所の運営でお困りの方や、仕事がないことでお悩みの利用者の方は、ぜひ参考にしてください。

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B型継続支援事業所の仕事がない原因

B型事業所が利用者へ安定した仕事を提供することは、事業所の運営だけでなく、利用者の方の就労意欲や社会参加を促すうえでも重要です。しかし、仕事がないという状況に直面する事業所も少なくありません。

B型事業所の仕事がなくなるおもな原因として、以下があげられます。

  • 事業所の営業力が不足している
  • 利用者の特性と仕事内容がマッチしていない
  • ほかの事業所との競合が激化している
  • 事業所の特性や強みが不明確である
  • 地域の特性によるもの

なお、単一の理由によるものではなく、これらの要因が複雑に絡み合っているケースも存在します。それぞれ詳しく見ていきましょう。

事業所の営業力が不足している

就労継続支援B型事業所が仕事を得るためには、企業や地域社会へ積極的にアプローチする営業力が不可欠です。しかし営業活動に不慣れであったり、専門の担当者がいなかったりする福祉事業所も多く見られます。

B型事業所は福祉サービス提供に重点を置いており、企業への営業や新たな仕事の開拓といったビジネス的な視点やノウハウは不足しがちです。事業所の活動内容や利用者の方の特性を上手く企業側に伝えきれていないと、仕事の依頼につながりにくいといえます。

利用者の特性と仕事内容がマッチしていない

仕事の質を高めるためには、提供される作業内容が利用者の方の特性や能力、興味関心と合致していることが重要です。

仕事があったとしても、利用者の方のレベルに合わなかったり、集中力が続かない単調な作業ばかりだったりすると、モチベーションの低下や作業効率の悪化を招くでしょう。たとえば、手先が不器用で集中力が持続しない特性を持つ方にとって、長時間にわたる細かい作業は大きな負担になります。

個々の利用者の特性を深く理解し、それに合った仕事内容を提供することが、安定した就労支援において重要です。

ほかの事業所との競合が激化している

B型継続支援事業所が安定して仕事を得られない一因として、市場における競争の激化があげられます。

少子高齢化や福祉ニーズの多様化に伴い、さまざまな形態の福祉サービス事業所が増加しています。これに伴い、企業が委託する作業内容や求める品質も高度化しており、ただ作業を請け負うだけでは競争に勝ち残ることが難しくなっているのが現状です。

各事業所が差別化を図ろうと努力していますが、提供できるサービスや作業内容に大きな違いがない場合、企業側は価格や納期の面で有利な事業所を選ぶ傾向にあります。このような競争環境の中で、差別化戦略を明確に打ち出せていないと、仕事の機会を失うリスクが高いといえるでしょう。

事業所の特性や強みが不明確である

就労継続支援B型事業所が仕事を得るためには、事業所の特性や強みを明確にし、それを外部にアピールすることが不可欠です。事業所が何に特化しているのかや、ほかの事業所との違いが曖昧である場合、企業側は発注する明確な理由を見出しにくくなります。

たとえば「どのような仕事でも対応します」のような漠然としたアピールに終始していると、事業所ならではの強みや専門性が伝わりません。具体的な強みが不明確なままでは、競合他社との差別化ができず、仕事の獲得につながりにくくなります。

地域の特性によるもの

仕事がないという課題は、地域社会の特性に根ざしていることも少なくありません。たとえば、地域に企業が少ない、あるいは小規模な事業所が多い場合、そもそも仕事を委託するニーズが低いといった状況が考えられます。

また、特定の産業に偏りがある地域では、その産業が不振に陥ると、請け負える仕事の種類や量が一気に減少するリスクも高いでしょう。さらに地域によっては、障害者雇用に対する理解が進んでいなかったり、事業所との連携に消極的な企業が多かったりする場合もあります。

事業所が地域のニーズを正確に把握し、それに合わせた体制を整えることが大切です。

B型継続支援事業所の仕事がない状況が続くリスク

B型事業所にとって、仕事がない状況が続くことは事業所の運営基盤を揺るがしかねません。以下のように、深刻な影響を及ぼす可能性があります。

  • 事業所の経営状況が悪化する
  • 福祉サービスの質の低下につながる
  • 利用者のモチベーション低下を引き起こす

それぞれ見ていきましょう。

事業所の経営状況が悪化する

就労継続支援B型事業所において仕事が不足すると、直接的に事業所の経営状況が悪化しかねません。B型事業所の収入は、おもに利用者さんが作業を通じて得た工賃の対価や、訓練等給付費によって成り立っています。

仕事がなければ利用者の方が得る工賃が減り、事業所の収入も減少するでしょう。その結果、経営状況が悪化し、スタッフの給与や事業所の維持費を賄えなくなるおそれもあります。

福祉サービスの質の低下につながる

B型事業所で提供される仕事は、利用者の方にとって単なる作業ではありません。社会参加によって、経験や自己肯定感を育む訓練の場です。仕事が不足すれば、利用者さんは社会参加の機会を失い、スキルアップや社会性の維持・向上が難しくなります。

また、事業所の収入が減ることで、質の高いスタッフの確保や研修が困難になったり、設備投資が滞ったりすることも考えられるでしょう。利用者一人ひとりに合わせた細やかな支援が行き届かなくなると、事業所本来の目的である就労支援が十分に果たせません。

利用者のモチベーション低下を引き起こす

利用者の方はB型事業所への通所によって社会とのつながりを感じ、自己肯定感を育みます。しかし仕事がなければ、事業所に来てもやることがないと感じ、通所する意欲を失ってしまうでしょう。

とくに、具体的な成果物が見えにくい作業ばかりが続いたり、作業自体がなかったりしている場合は、モチベーション低下を引き起こすリスクが高いといえます。状況によっては、利用者の方の生活リズムの乱れや健康状態の悪化を引き起こすリスクも考えられます。

B型継続支援事業所で仕事がないときの対策

就労継続支援B型事業所で仕事がない状況は、事業所の運営基盤を揺るがすだけでなく、利用者の方にも深刻な影響を及ぼしかねません。しかしこの困難な状況は、事業所が現状を見直し、新たな戦略を立てる絶好の機会ともいえます。

ここでは、B型事業所が安定した運営を目指すための対策として、以下を紹介します。

  • 事業所の強みを明確化する
  • 営業戦略の見直しを行う
  • 新たな仕事内容の創出を目指す
  • 関係機関との連携を強化する
  • 利用者支援の強化とスキルアップを図る
  • 事業所の内部体制を強化する
  • 事業所で新たな仕事やサービスを生み出す
  • 行政の支援制度を活用する

それぞれ見ていきましょう。

事業所の強みを明確化する

就労継続支援B型事業所で仕事がない状況を改善するには、まず事業所の強みや独自性を明確にすることが不可欠です。ほかの事業所と同じようなサービスを提供しているだけでは、企業側が仕事を発注する明確な理由を見出しにくいでしょう。

たとえば、利用者の中に特定のスキルに長けた人が多い、特定の作業において高い品質を保てるなど、具体的な強みを明らかにすることが大切です。強みを言語化し、事業所全体で共有することが、外部への効果的なアピールを実現するための第一歩になります。

営業戦略の見直しを行う

仕事がない状況が続く場合は、これまでの営業方法が地域の企業や潜在的な発注先のニーズに合致しているか見直し、客観的に評価しましょう。事業所の強みとマッチする業種やターゲットを絞り込み、具体的なメリットを提示することが大切です。

また、一度きりの営業で終わらせず、定期的な情報提供や受注後のアフターフォローなどを通じて、企業との関係性を深める取り組みも欠かせません。ターゲットを明確にし、多角的なアプローチを試すことで、新たな仕事の機会を創出できる可能性が高まります。

また、B型事業所が企業から仕事を得るための強力な訴求点の1つに、CSRへの貢献があります。CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とは、企業が利益を追求するだけでなく、社会や環境に対して責任ある行動をとるべきだという考えや取り組みのことです。

企業が就労継続支援B型事業所に業務を委託することは、単に人手不足の解消やコスト削減につながるだけではありません。「障がいのある方々の就労支援に貢献している」という明確な社会的価値をもたらします。このCSRの側面を積極的に企業に伝えることも、営業手法として有効です。

新たな仕事内容の創出を目指す

事業所で提供できるサービスの幅を広げるためにも、能動的に新しい仕事のニーズを発掘してみましょう。地域社会の潜在的な困り事や、中小企業の業務課題に目を向けることで、新たな企業とパートナーを築く契機となります。

とくに現在の作業が特定の業種に偏っている、または供給が不安定な場合は、リスク分散のためにも新しい分野への挑戦を検討してみるのがおすすめです。これまで請け負ってこなかった分野を開拓することで、利用者の新たな適性や能力を発見するきっかけにもなるかもしれません。

関係機関との連携を強化する

安定的で多様な就労機会の確保のためには、地域のハローワークや地域活動支援センターなど、関係機関との連携が不可欠です。連携を密にすることで、地域全体で障がいのある方の就労と自立を支えるネットワークが構築されます。

とくに利用者が職場で直面する問題に早期に対応し、長く働き続けられるようサポート体制を構築することが大切です。定期的な情報交換や合同での取り組みを通じて信頼関係を築き、新たな仕事獲得の機会を広げましょう。

利用者支援の強化とスキルアップを図る

事業所が提供できる仕事の幅を広げるためには、利用者の方がより多様な作業に対応できるよう、スキルアップを図ることも有効です。定期的な面談で目標設定や進捗確認を行い、利用者の方ができることを増やすと、結果的に事業所が請け負える仕事の選択肢を広げられます。

たとえば、PCスキルやコミュニケーション能力などの基礎的なスキルなどを強化することで、より安定した受注体制が整います。

また、特定の分野に興味を持つ利用者の方がいる場合もあるでしょう。そのような場合は、特定の分野に特化した研修や外部講師を招いた講座を実施することで、より付加価値の高い業務を開拓できるかもしれません。

事業所の内部体制を強化する

どんなに営業を頑張ったとしても、内部体制が整っていなければ、安定した仕事の獲得や質の高い支援の継続は困難です。職員の業務負担が増え、定着率が低下したり、利用者への支援が手薄になったりするリスクが高まります。

内部体制を強化するためには、業務フロー全体を見直し、品質管理体制を確立することが大切です。また、利用者の方の作業能力や得意分野を詳細に把握し、適切な人員配置によって作業効率や品質の向上を図ることが求められます。

安定した事業運営と利用者への質の高い支援を持続するためにも内部体制を強化し、事業所の基盤を整えましょう。

事業所で新たな仕事やサービスを生み出す

B型事業所の運営において、外部からの依頼を待つだけでなく、自ら新たな仕事やサービスを生み出す視点を持つことも大切です。地域のニーズや利用者さんの得意分野を深く掘り下げ、オリジナルの商品開発やサービス提供も検討してみましょう。

具体例としては、地域特産の農産物を使った加工品づくり、ハンドメイド品の製作・販売などがあげられます。事業所が主体となって価値を創造することで、安定した収入源の確保と多様な就労機会の創出につながるでしょう。

行政の支援制度を活用する

国や地方自治体が提供する支援制度を積極的に活用することで、事業所の運営改善につながる可能性があります。障害者雇用を促進するための補助金や助成金、企業が障害者を雇用する際に受けられる優遇制度などを積極的に活用してみましょう。

また国の制度だけでなく、都道府県や市町村が地域の特性に合わせて、工賃向上支援や設備整備、運営安定化のための補助金などを設けている場合もあります。これらを活用することで、事業所の経営安定化を図りながら、新たな仕事確保の基盤を整えることが可能です。

B型継続支援事業所で仕事がないときに利用者ができること

就労継続支援B型事業所で仕事がない状況は、利用者の方にとっても不安や焦りを生じさせる原因になります。利用者の方が行動を起こし、現状を改善するためには、以下のような方法を試してみるのがおすすめです。

  • 事業所のスタッフに相談してみる
  • 事業所内のプログラムに参加しスキルアップを図る
  • ほかの選択肢も検討してみる

これらの具体的な行動について見ていきましょう。

事業所のスタッフに相談してみる

B型事業所で仕事が少ないと感じたら、まず事業所のスタッフに相談してみましょう。利用者の方からの意見は、事業所にとっても貴重な情報源となります。

また、個別面談の機会を設けてもらうようスタッフに依頼するのも1つの方法です。希望する仕事内容、将来の目標、これまでの経験や得意なことなどを具体的に伝えることで、可能性を広げるための具体的なサポートを検討してくれるでしょう。

事業所内のプログラムに参加しスキルアップを図る

就労継続支援B型事業所で仕事が少ない時期は、事業所内で提供されているプログラムへ積極的に参加してみることをおすすめします。プログラムへの参加は、自身のスキルアップを図る絶好の機会です。

仕事がない時間を有効活用し、パソコン操作やビジネスマナー、コミュニケーション練習など、就労に必要な基礎能力を磨きましょう。新しいスキルを習得することで、対応できる仕事の種類が増え、将来的に安定した仕事が得られる可能性が高まります。

ほかの選択肢も検討してみる

仕事が少ない状況が続き、改善が見られない場合は、ほかの就労継続支援B型事業所の利用や、別の福祉サービスを検討してみるのも一案です。

事業所ごとに、得意な作業内容や支援体制、雰囲気などの違いがあります。今の事業所では得られにくい仕事の機会が、別の事業所で見つけられるかもしれません。積極的に情報収集を行い、最適な選択肢を見つけるための行動を起こしましょう。

まとめ:就労継続支援B型で仕事がないときは現状を見直すタイミング

B型事業所における仕事不足は、経営状況の悪化に加えて、福祉サービスの質の低下や利用者のモチベーション低下などのリスクに直結します。事業所は仕事不足に陥ることのないよう、積極的な対策を講じることが大切です。

事業所全体で課題解決に取り組むことで、より質の高い就労支援につなげられるでしょう。

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