障がいや体調の事情で一般企業の勤務が難しい方にとって、就労継続支援B型は無理なく社会とつながれる福祉サービスです。
一方で、A型との違いが分からず、自分に合っているのか不安と感じている方も少なくありません。
本記事では、就労継続支援B型のメリット・デメリットやA型との違い、選び方のポイントを紹介します。
制度を正しく理解し、自分らしい働き方を見つけるための参考にしてください。
就労継続支援B型のメリット
就労継続支援B型は、障がいや体調の事情で一般企業の勤務が難しい方でも、自分のペースで働ける福祉サービスです。
ここでは、以下4つのメリットを紹介します。
- 自分のペースで働ける
- 工賃が得られることで自己肯定感につながる
- 支援員のサポートで安心して仕事に取り組める
- 生活リズムが整い社会性も身につく
それぞれ見ていきましょう。
自分のペースで働ける
就労継続支援B型は、利用者一人ひとりの体調や生活リズムに合わせて、無理なく働ける環境が整っています。
週数回や数時間からの利用を認めている事業所もあるため、体力面に不安がある方でも安心して通所を始められるでしょう。
体調が優れない日は休むことも可能で、プレッシャーを感じずに自分のペースを保ちながら就労を継続できます。
工賃が得られることで自己肯定感につながる
就労継続支援B型では、作業の対価として「工賃」が支払われます。
自分の働きが形で返ってくるので「自分にもできることがある」と実感でき、達成感や自信につながります。
働くことに不安を感じている方にとって、社会とのつながりを感じる大切な機会になるでしょう。
支援員のサポートで安心して仕事に取り組める
就労継続支援B型には、福祉や就労支援の専門知識を持つ支援員が常駐しており、仕事や体調面の相談がいつでもできます。
対人関係に不安を感じている方でも、安心して作業に取り組める環境が整っています。
作業に慣れるまでスタッフが丁寧にサポートしてくれるため、就労が初めての方でも安心してスタートできるでしょう。
生活リズムが整い社会性も身につく
就労継続支援B型では、決まった時間の通所を習慣化すれば、生活リズムを整えるきっかけになります。
自宅にこもりがちだった方も、朝起きて準備をして外出すれば、自然と生活にメリハリが生まれます。
支援員や利用者とのやり取りを通じて、社会生活に必要な基本的なマナーやコミュニケーション力を養えるでしょう。
無理のない範囲で人と関わる経験を重ねることで、自信や安心感にもつながります。
就労継続支援B型のデメリット
就労継続支援B型はメリットがある一方で、利用前に知っておきたいデメリットもあります。
ここでは、以下3つのデメリットを紹介します。
- 工賃が一般的な給料よりも低い
- 事業所によって作業内容や支援の質に差がある
- 社会的な理解が進んでいないケースもある
詳しく見ていきましょう。
工賃が一般的な給料よりも低い
就労継続支援B型で支払われる工賃は、厚生労働省によると月額2万円前後が平均的で、最低賃金は適用されません。
就労継続支援B型が福祉サービスの位置づけであり、「一般就労が難しい方のリハビリ的な場」として設けられています。
経済的な自立よりも、就労を通じて生活リズムや社会性を取り戻すことがおもな目的とされています。
利用にあたっては障害年金や家族の支援、行政の福祉サービスと組み合わせた生活設計が必要になるでしょう。
事業所によって作業内容や支援の質に差がある
就労継続支援B型は、事業所ごとに運営方針や提供している作業内容が異なります。
たとえば、軽作業が中心の事業所もあれば、農業や製造を提供している事業所などさまざまです。
支援員の人数や支援体制によって、丁寧なサポートが受けられる事業所もある一方で、個々への支援が限定的になる場合もあります。
社会的な理解が進んでいないケースもある
就労継続支援B型は、一般の雇用とは仕組みが異なるため、周囲から理解されていない場合もあります。
たとえば、「なぜ働いているのに給料が少ないのか」「就労なのに福祉なのか」といった誤解が生じやすい傾向もあります。
事業所での仕事が「仕事」として認識されにくい場合もあり、本人や家族が説明に苦労する場面も少なくありません。
制度の正しい理解が浸透していない現状もあるため、社会全体での情報共有や理解促進が今後の課題といえるでしょう。
就労継続支援B型とは
ここでは、就労継続支援B型を利用する前に知っておくべき特徴や仕組みを解説します。
- 対象者と利用条件
- 手続きや利用開始までの流れ
- 平均工賃の金額
それぞれ見ていきます。
対象者と利用条件
就労継続支援B型の対象は市区町村の判断により、以下の条件に該当する方が利用できます。
- 知的障がい・精神障がい・身体障がいなどにより一般就労が困難な方
- 就労継続支援A型の利用が、体調や支援の必要性の面で難しいと判断された方
- 就労移行支援を利用後、一般就労できずに支援が必要とされた方
- 障害者手帳の所持なしでも、医師や自治体の判断により利用が認められた方
- 障害基礎年金1級受給者の方
利用するには、市区町村から「障害福祉サービス受給者証」の取得が必要です。
医師の意見書や相談支援専門員によるアセスメントをもとに、本人の状態や適性が確認されます。
手続きや利用開始までの流れ
就労継続支援B型を利用するには、市区町村の窓口を通じた手続きが必要です。
以下のような流れで進められます。
- 市区町村の福祉窓口へ相談
- サービス利用計画案の作成
- 医師の意見書など必要書類を提出
- 障害福祉サービス受給者証の申請・交付
- 事業所の見学・体験利用を実施
- 事業所と契約・利用開始
受給者証の交付までには通常2〜4週間ほどかかるため、早めの相談がおすすめです。
平均工賃の金額
就労継続支援B型の平均工賃は月額2万3,053円(令和5年度・厚生労働省)です。
前年度の1万7,031円から大幅に増加しています。
工賃増加の要因は、令和6年度報酬改定に伴う「平均工賃月額の算出方法の見直し」が行われたためです。
また、工賃は作業内容の種類や地域の物価水準などによって、一定の差があります。
都道府県別の平均工賃月額では、1位は徳島県の2万9,312円、もっとも低いのは兵庫県の1万9,140円との結果でした。
利用を検討する際は、作業の内容や支援体制なども含めた判断が必要になるでしょう。
就労継続支援A型との違いは?
就労継続支援には「A型」と「B型」の2種類があり、両者の違いは雇用契約の有無にあります。
以下に違いをまとめました。
| 項目 | A型 | B型 |
| 雇用契約 | あり | なし |
| 賃金(工賃) | 最低賃金以上の給与が支給される | 平均月額2万円程度(事業所によって異なる) |
| 対象者 | 働く意欲があり、一定の勤務が可能な方 | 働く意欲はあるが、体調や障がい特性により安定した就労が難しい方 |
| 勤務形態 | 週20時間以上の勤務 | 柔軟に調整可能 |
| 目的 | 一般就労への移行を目指す支援 | 自分のペースで働きながら社会参加を促す支援 |
| 支援内容 | 就労指導、職場定着支援 | 作業訓練、生活リズムの安定、社会性の向上 |
「A型」と「B型」では支援の内容や働き方は異なるため、自分の状態や希望に応じた選択が重要です。
就労継続支援B型での仕事内容5例
就労継続支援B型では、障がいや体調に配慮した多様な作業が用意されています。
ここでは、代表的な5つの作業例を紹介します。
- 軽作業(内職・袋詰め・シール貼りなど)
- 清掃業務
- 農作業・園芸作業
- パソコン作業・データ入力
- 製造や加工業務
それぞれ詳しく見ていきましょう。
関連記事:就労継続支援B型の6つの仕事内容と自分に合った仕事選びのポイントも紹介
軽作業(内職・袋詰め・シール貼りなど)
商品の仕分けや検品、チラシの封入、シール貼りといった作業です。
手先を使った反復作業で座って作業できるものも多いため、集中力や体力に不安がある方でも無理なく取り組めるでしょう。
作業はシンプルで分かりやすいため、初心者にも人気があります。
清掃業務
作業内容は、床の掃除・窓ふき・ごみの分別・トイレや洗面所の清掃などが中心です。
集中して作業に取り組むのが得意な方に適しており、体を動かすことで気分のリフレッシュにもつながるでしょう。
事業所によっては近隣施設の清掃業務を請け負っている場合もあります。
農作業・園芸作業
野菜や花の栽培、草取り、水やり、収穫といった自然の中で行う作業です。
土に触れながら、季節の移り変わりを感じられる仕事で、リラックス効果も期待できます。
屋外で身体を動かすのが好きな方におすすめです。
パソコン作業・データ入力
文字入力や表の作成、簡単なデータ処理など、パソコンを使った軽作業です。
WordやExcelの基本操作ができる方に向いており、静かな環境でマイペースに取り組めます。
事業所によっては在宅作業に対応している場合もあります。
製造や加工業務
食品製造(クッキー・お弁当の盛り付け)や、木工・雑貨などの組み立て・加工作業です。
作業は工程ごとに分担されており、未経験の方でも段階的に作業を覚えられる仕組みのため、安心して始められます。
手を動かすのが好きな方や、もの作りに興味がある方に向いている仕事です。
完成した製品を見ることで、達成感ややりがいを感じやすいでしょう。
就労継続支援B型の利用前に知っておきたい注意点
就労継続支援B型は、事業所選びや利用の方法によって満足度に差が出る場合もあります。
後悔しないために、3つの注意点を押さえておきましょう。
- 事業所によって作業内容や支援体制が異なる
- 通所ペースは柔軟でも継続が求められる
- 一般就労への移行を前提としない事業所もある
それぞれ詳しく解説します。
事業所によって作業内容や支援体制が異なる
就労継続支援B型は、事業所ごとに独自の運営方針を持っており、提供される作業内容や支援の手厚さに違いがあります。
支援体制にもばらつきがあり、以下のような点が事業所によって異なります。
- 就労支援員や精神保健福祉士といった専門スタッフの在籍状況
- 就労継続支援A型や就労移行支援との連携体制
利用を検討する際は、自分の希望する働き方や将来の目標に合った支援が受けられるか見極める必要があるでしょう。
通所ペースは柔軟でも継続が求められる
就労継続支援B型では週1回からの通所や1日数時間の勤務など、柔軟な働き方が可能です。
ただし、継続的な利用が前提となっているため、欠席が多い場合や不定期な通所は、事業所側での受け入れが難しい場合もあります。
体調管理や生活リズムを整えつつ、無理のない範囲で安定して通えるペースを保つことが大切です。
一般就労への移行を前提としない事業所もある
すべての事業所が、一般企業への就職をゴールにしているわけではありません。
中には、「無理なく長く働ける場の提供」を重視し、ステップアップではなく安定した居場所作りに力を入れている事業所もあります。
一方で、作業訓練や生活支援を通じて、将来的に就労継続支援A型や一般就労への移行を目指す支援に積極的な事業所もあります。
将来的に一般就労を目指している方は、事業所がどのような方針で支援を行っているかを事前に確認しておきましょう。
就労継続支援B型事業所を選ぶ3つのポイント
安心して通い続けるためには、いくつかの視点から自分に合った事業所を見極めることが大切です。
ここでは、以下3つのポイントを紹介します。
- 作業内容が自分に合っているか
- 通いやすい立地にあるか
- 支援スタッフの対応や雰囲気
詳しく見ていきます。
作業内容が自分に合っているか
事業所によって提供している作業はさまざまです。
軽作業を中心とするところもあれば、農作業や清掃、食品製造、パソコン業務などを行っている場合もあります。
作業の種類だけでなく、「体力的に続けられそうか」「興味を持てそうか」といった視点も大切です。
見学や体験利用を通して、自分に合った作業内容かを確認しておきましょう。
通いやすい立地にあるか
どれだけ魅力的な事業所でも、通いにくい場所では長く続けられないでしょう。
自宅からの距離や、公共交通機関の利用状況、送迎サービスの有無も重要な判断基準です。
とくに、体調に不安がある方にとっては、無理なく通える距離かが継続のカギになります。
支援スタッフの対応や雰囲気
支援員の接し方や事業所全体の雰囲気も、安心して通所を続けるうえで重要です。
話しかけやすいスタッフがいるか、困ったときに相談できる体制があるかなどを、見学の際に確認しておくと安心です。
ほかの利用者との関係性や事業所内の空気感も、自分に合うかどうかを見極めるポイントになります。
まとめ|就労継続支援B型は自分らしく働く第一歩になる
就労継続支援B型は、障がいや体調の事情から一般就労が難しい方にとって、無理のないペースで社会とつながれる大切な「働く場」です。
自分に合った作業や支援体制のもとで少しずつ働くことに慣れ、生活リズムや自己肯定感を育めるでしょう。
支援内容や作業の種類は事業所によってさまざまなため、安心して通い続けるには、自分に合った環境かの見極めが大切です。
無理なくできることから始めることで自信を持ち、自分らしい働き方を築いていけるでしょう。