就労継続支援B型の利用までの流れ|利用条件から事業所選びまで徹底解説

就労継続支援B型は障がいや体調面に不安がある方でも、自分のペースで働ける福祉サービスです。

ただし、利用には医師への相談や事業所の見学、障害福祉サービス受給者証の申請など、いくつかのステップが必要です。

本記事では、利用開始までの流れや条件、事業所選びのポイントまでを詳しく解説します。

自分に合った支援を見極め、安心して通所を始めるためのヒントに役立ててください。

就労継続支援B型利用での流れ5ステップ

就労継続支援B型を利用するには、以下の5つのステップを踏む必要があります。

  1. ステップ1|主治医に支援の必要性を確認する
  2. ステップ2|気になる事業所へ見学・体験申し込み
  3. ステップ3|障害福祉サービス受給者証の申請
  4. ステップ4|相談支援専門員と「サービス等利用計画」を作成する
  5. ステップ5|契約手続きをして利用を開始する

円滑に利用を開始できるよう、順を追って解説します。

ステップ1|主治医に支援の必要性を確認する

就労継続支援B型の利用には、医療的な支援が必要であることの証明が必要です。

主治医の意見書は、支援の妥当性や就労に対する可否を判断する重要な書類として扱われます。

精神科・心療内科・内科などの相談する診療科で迷う場合は、現在通っている主治医に相談しましょう。

なお、自治体によっては「診断書」と「意見書」の両方が必要になるケースもあるので、注意が必要です。

ステップ2|気になる事業所へ見学・体験申し込み

見学や体験では、以下5つの項目から自分に合った場所かどうかを見極めましょう。

チェック項目 確認内容の例
作業内容 自分の体力や特性に合っているか
雰囲気 職員や利用者の対応は丁寧で安心できるか
通所環境 清潔さ、設備、音や匂いなどの快適性
支援体制 支援員の人数やサポート内容の説明はあるか

 

複数の事業所を比較すると、より納得のいく選択がしやすくなるのでおすすめです。

ステップ3|障害福祉サービス受給者証の申請

障害福祉サービス受給者証とは、障がいのある方が福祉サービスを受けるための公的な証明書で、利用の可否や支給量などを示すものです。

申請は、お住まいの自治体(市区町村)の障がい福祉窓口で行います。

提出書類は医師の意見書や本人確認書類に加え、必要に応じて障害者手帳や診断書なども求められます。

申請後は「障害福祉サービス受給者証」の交付までに1〜2ヶ月程度かかる場合もあるので、早めに準備を進めましょう。

ステップ4|相談支援専門員と「サービス等利用計画」を作成する

「サービス等利用計画」は、事業所と連携して支援を行ううえで重要な書類です。

受給者証の申請と並行して、専門資格を持つ相談支援専門員と面談を行いながら作成します。

面談では、現在の生活状況や通所の日数、就労に対する希望などをヒアリングし、本人に合った支援内容をまとめていきます。

計画内容は支給決定に大きく関わるため、正確かつ丁寧な作成が求められるでしょう。

ステップ5|契約手続きをして利用を開始する

「障害福祉サービス受給者証」の交付が完了したら、利用を希望する就労継続支援B型事業所と正式に契約を結びます。

契約時には、支援内容・作業時間・工賃・支援体制などの説明を受け、内容に同意したうえで利用を開始します。

まずは短時間の通所からスタートし、体調や適応状況を見ながら作業量を増やすなど、柔軟な対応も可能です。

不安な点は契約前に担当の相談支援専門員へ相談しておくと、安心して利用を始められるでしょう。

就労継続支援B型とは

就労継続支援B型は、障がいや体調の影響などで一般就労が難しい方に対し、就労機会と生産活動を提供する福祉サービスです。

ここでは、以下のような就労継続支援B型の特徴を解説します。

  1. 就労継続支援B型の作業内容
  2. 就労継続支援B型の1日の流れ
  3. 就労継続支援A型との違い

それぞれ詳しく見ていきましょう。

就労継続支援B型の作業内容

作業内容は各事業所で異なりますが、具体例として以下のような作業があげられます。

  • 軽作業(内職・封入・シール貼り)
  • 清掃業務(施設・公園など)
  • 農作業
  • 製品の加工・組立て
  • パソコン入力作業

無理のない作業量からスタートし、慣れてきたらステップアップも可能です。

たとえば、集中力に不安がある方や初めて通所する方は、単純作業で手順が分かりやすい封入作業などの軽作業がおすすめです。

一方で、体を動かすのが好きな方は、農作業などの身体を動かす作業では達成感が得られやすいでしょう。

利用者の得意な分野や就労意欲を尊重しながら、社会参加や自立に向けた支援を受けられます。

就労継続支援B型の1日の流れ

就労継続支援B型事業所では、利用者の体調や生活スタイルに合わせたスケジュールでの通所が可能です。

以下に、事業所内就労でのスケジュールの一例を示しました。

時間帯 内容
10:00~10:15 登所・体調確認・朝礼
10:15~11:00 午前の作業(軽作業・清掃・パソコン作業など)
11:00~11:15 休憩
11:15~12:00 午前の作業の続き
12:00~13:00 昼休憩
13:00~14:00 午後の作業またはレクリエーション
14:00~14:15 休憩
14:15~15:00 午後の作業またはレクリエーション
15:00~15:15 作業の片付け・終礼・帰宅準備

 

上記の例では午前・午後それぞれに15分の休憩があり、昼休憩も1時間あるため、無理なく取り組めるスケジュールになっています。

通所の仕方も柔軟で、「午前中だけ」「午後からのみ」などの調整も可能です。

就労継続支援A型との違い

就労継続支援のB型とA型の違いは、以下のとおりです。

比較項目 A型 B型
雇用契約 あり なし
賃金の基準 最低賃金以上の給与 工賃(地域差・事業所差あり)
対象者 一般の職場で働くのは難しいものの、雇用契約が可能な方 雇用契約が難しい方、体力・精神面に不安がある方
支援の目的 一般就労に向けた準備・訓練 日中活動・生活リズムの安定・社会参加支援
通所ペース 原則として週5日勤務相当 週1〜数日、短時間の通所も可

 

就労継続支援A型とB型は、どちらも就労支援を目的としていますが、支援内容や求められる働き方が異なります。

就労継続支援B型事業所の3つの利用条件

就労継続支援B型を利用するには、以下の項目で一定の条件があります。

  1. 対象者
  2. 利用期間
  3. 利用料金

詳しく解説します。

対象者

就労継続支援B型の利用対象者は、障がいや体調の理由により、一般企業などでの就労が困難な方です。

具体的には、以下のような方が対象となります。

  • 知的・精神・身体障がいなどで企業への就労が難しい方
  • 就労継続支援A型の利用が難しいと判断された方
  • 就労移行支援を経ても就職に結びつかなかった方
  • 医師の診断や自治体の判断により、支援が必要と認められた方

主治医の意見書や支援者によるアセスメントをもとに、自治体が利用の可否を判断します。

なお、利用には、市区町村から発行される「障害福祉サービス受給者証」の取得が必要です。

関連記事:就労継続支援B型は高校生や大学生でも利用できる?認められる条件について解説

利用期間

就労継続支援B型には、明確な利用期限が設けられていません。

利用者の体調や生活状況に応じて、長期間にわたっての継続利用が可能です。

ただし、定期的にサービス等利用計画の見直しが行われ、A型や就労移行支援へのステップアップも検討される場合もあります。

そのため、決まった利用期限はなく、利用者の自立に向けたペースに合わせて、柔軟に利用できる仕組みです。

利用料金

就労継続支援B型は障害福祉サービスに該当するため、基本的にサービス利用料の1割が自己負担です。

ただし、以下のように所得に応じた「負担上限月額」が設けられているので、利用量が多くても追加の費用はかかりません。

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯 0円
一般1 市町村民税課税世帯 9,300円
一般2 上記以外 3万7,200円

参照:「障害者の利用者負担」|厚生労働省

 

たとえば、3人世帯で障害基礎年金1級を受給し、世帯収入が300万円以下であれば「低所得世帯」として月額0円で利用できます。

「一般1」に該当する所得割16万円未満の課税世帯は、年収670万円以下程度が目安とされ、月額上限が9,300円です。

なお、「一般1」の区分には、20歳以上で入所施設やグループホームを利用している方は含まれないため、対象外です。

就労継続支援B型の利用前に押さえておきたい注意点

就労継続支援B型の利用開始後にギャップを感じることも少なくありません。

利用前に、以下3点を確認しておきましょう。

  1. 就労移行やA型への移行が前提でない事業所もある
  2. 通所の継続が前提となる
  3. 工賃は最低賃金が保証されない

それぞれの注意点を解説します。

就労移行やA型への移行が前提でない事業所もある

就労継続支援B型は、将来的に一般就労やA型を目指すとは限りません。

中には、体調の安定や生活リズムの維持を目的に、長期的な居場所作りや日中活動の継続を重視する事業所もあります。

そのため「数年後にはA型や一般就労に移りたい」と考えている方は、事業所の支援方針を事前に確認しておきましょう。

将来の希望や目標と支援体制が一致しているかを事前に見極めることで、ミスマッチを防げます。

通所の継続が前提となる

就労継続支援B型では、1日数時間や週1〜2回など柔軟な通所も可能ですが、定期的な通所が前提です。

体調や気分に波があっても、できる範囲で「通い続ける」ことが重視されるため、無理のないペースでの利用計画が必要です。

長期的に不規則な通所が続くと、利用継続が難しくなるおそれもあります。

体調や生活環境を踏まえ、無理なく続けられる通所スタイルを相談支援専門員や事業所と一緒に考えましょう。

工賃は最低賃金が保証されない

就労継続支援B型では、事業所と利用者の間に雇用契約がないため、最低賃金法は適用されません。

 

作業に応じて支給される「工賃」は、厚生労働省(令和5年)のデータによると、全国平均で月額2万3,053円程度です。

工賃の金額は各事業所の収益状況や取り組む作業の種類、地域ごとの物価や支援体制によって異なります。

生活費の確保を目的とするよりも、社会参加や就労準備としての役割が重視されています。

失敗しない就労継続支援B型事業所の選び方

自分に合った事業所を見つけるために、以下のポイントを押さえることが大切です。

  1. 作業内容が自分に合っている
  2. 通いやすい立地にある
  3. スタッフとの相性や支援体制を見極める
  4. 複数の事業所を比較して検討する

それぞれ見ていきましょう。

作業内容が自分に合っている

就労継続支援B型では、事業所ごとに提供している作業の内容が異なります。

以下を参考に、適性に応じた作業が提供されるかどうか確認しておきましょう。

作業内容 向いている方の例
軽作業(シール貼り・袋詰めなど) ・集中力や作業スピードに不安がある方

・初めての方

清掃業務 ・体を動かすことが好きな方

・ルーティンが得意な方

農作業・園芸 ・自然に触れたい方

・静かな環境が落ち着く方

パソコン作業 ・PC操作に慣れている方

・事務作業に興味がある方

製造・組立て作業 ・手先が器用な方、

・細かい作業に自信がある方

 

無理のない作業内容を選べば、通所の継続や就労意欲の維持につながりやすくなります。

通いやすい立地にある

自宅からの距離や公共交通機関のアクセスは、通所のしやすさに直結します。

自宅から遠すぎる場合は、移動による体力的な負担が大きくなり、通所が続かなくなるケースもあります。

徒歩圏内や公共交通機関でのアクセスが良好な場所であるかや、送迎サービスの有無などを事前に確認しておくと安心です。

自身の体調や生活リズムに合った通いやすさを優先して選びましょう。

スタッフとの相性や支援体制を見極める

継続的に就労継続支援B型事業所へ通所するためには、支援員の対応やコミュニケーションの取りやすさも重要です。

たとえば、作業中のフォローの程度や相談しやすい雰囲気があるかなどは、事業所ごとに異なります。

就労支援員や精神保健福祉士など専門スタッフの有無、個別支援計画の作成体制なども確認しましょう。

複数の事業所を比較して検討する

検討の際は、以下のような点を総合的に確認しましょう。

  • 提供されている作業の種類
  • スタッフの支援体制や対応の丁寧さ
  • 利用者全体の雰囲気やコミュニケーションの様子
  • 施設内の衛生面や設備の使いやすさ
  • 通所のしやすさ(立地・交通アクセスなど)

中でも「利用者の雰囲気」は、実際に現場を訪れて確認しておくのがポイントです。

たとえば、作業中に静かな環境が保たれているか、過度に賑やかではないかなど、自身に合った環境かの見極めが大切です。

自分に合った事業所を選べば、通所への不安が減り、安定した利用継続にもつながるでしょう。

まとめ|就労継続支援B型の利用までの流れを理解し、安心して通所を始めよう

就労継続支援B型は、障がいや体調に配慮しながら、自分のペースで働ける福祉サービスです。

利用にあたっては、主治医への相談、事業所の見学、障害福祉サービス受給者証の取得といった手続きが必要です。

受給者証の交付には1〜2ヶ月程度かかることもあるため、早めに準備を進めましょう。

作業内容や支援体制は事業所ごとに異なるため、複数の事業所を見学・体験して比較検討をおすすめします。

安心して通所を始めるためにも、制度の仕組みを理解し、自分に合った働き方を見つけてください。

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