B型作業所の給料はいくら?工賃の仕組みや収入を増やす方法を解説

就労継続支援B型(B型作業所)に関心がある方の多くは、「実際の収入がどれくらいなのか」が気になっているのではないでしょうか。B型作業所では、雇用契約を結ばずに軽作業などを行い、その対価として「工賃」が支給される仕組みです。

ただし、この工賃は一般的な「給料」とは制度や計算方法が大きく異なります。本記事では、B型作業所の平均工賃や仕組み、収入を増やすための方法を解説します。

制度を正しく理解したい方、利用を検討している方はぜひ参考にしてください。

B型作業所とは?

正式には「就労継続支援B型事業所」と呼ばれる福祉サービス施設です。障がいや病気、加齢などの理由で一般企業での就労が難しい方に対し、働く機会と訓練を提供しているのが特徴です。

ここでは、以下の項目ごとに解説します。

  • 対象者・支援の目的
  • A型作業所との違い
  • 雇用契約がない「非雇用型支援」の特徴

詳しく見ていきましょう。

対象者・支援の目的

B型作業所のおもな対象者は、一般企業やA型作業所での就労が困難な方です。具体的には、次のような条件に該当する方が利用できます。

  • 50歳以上の方
  • 障害基礎年金1級を受給している方
  • 就労経験があるが体調が安定せず継続勤務が困難な方

B型作業所の目的は、就労を通じて生活リズムを整えたり、社会参加の意欲を高めたりすることです。将来的にA型や一般就労へ移行するステップとして活用されることもあります。

A型作業所との違い

就労継続支援にはA型とB型の2種類があり、両者の大きな違いは「雇用契約の有無」と「支給される収入の形態」です。

  • A型:雇用契約を結び、最低賃金以上の給料を支給
  • B型:雇用契約を結ばず、作業実績に応じた「工賃」を支給

A型は安定して働けることが前提で、出勤日数や作業時間も企業に近い体制です。一方、B型は通所日や作業内容を柔軟に調整でき、体調に波がある方でも無理なく働ける特徴があります。

関連記事:就労継続支援A型・B型の違いとは?メリット・デメリットも解説

雇用契約がない「非雇用型支援」の特徴

B型作業所では、利用者と事業所との間に雇用契約が存在しないため、「非雇用型支援」と呼ばれます。一般企業の社員やアルバイトのような労働者とは異なる立場であり、労働基準法・最低賃金法といった法律の適用も受けません。

そのため、支給される工賃は労働の対価ではなく、作業訓練への協力に対する「報酬」という位置づけになります。工賃の額は、下記の要素によって変動し、毎月の金額が安定しにくいのが現状です。

  • 作業の内容や生産性
  • 事業所の収益状況

一方で、非雇用型の仕組みにより、利用者は体調や生活リズムに合わせて通所日数や作業時間を柔軟に調整できます。自分のペースで無理なく働ける点が、B型作業所の大きなメリットといえるでしょう。

B型作業所の給料=工賃の仕組み

B型作業所で支払われるお金は、一般的な「給料」ではなく「工賃」と呼ばれます。事業所と利用者の間に雇用契約が存在しない「非雇用型支援」なので、労働基準法に基づく賃金支払いの義務がないためです。

ここでは、「工賃」と「給料」の違いや、工賃の決まり方について解説します。

工賃と給料の違い

給料は、企業と労働者が雇用契約を結んだうえで支払われる賃金です。労働基準法によって、最低賃金や支払い日、時間外手当などが明確に定められています。給与明細には基本給や各種手当・控除額が記載され、労働者の権利として保障されるものです。

一方で、B型作業所の工賃は、雇用契約に基づく賃金ではありません。福祉サービスの一環として提供される「成果報酬」です。

施設での作業を通じて得られた収益の一部を、利用者に還元する仕組みです。最低賃金法の適用はなく、金額は作業内容や事業所の経営状況によって異なります。そのため、一般的な給料と比べて低くなるのが現状です。

工賃の決め方

B型作業所の工賃は、施設で行う生産活動による収益(工賃総額)を、事業所ごとの「工賃規定」に基づいて利用者へ分配する形で決定されます。工賃規定には、配分方法や評価基準、加算の条件などが記載されており、各事業所によって異なります。

支払い方法は、下記のようにさまざまです。

  • 日給制:1日の出勤に対して固定額を支給
  • 時給制:作業時間に応じて支給
  • 月給制:基本工賃に成果手当を加えた形で支給

また、通所日数や作業参加の頻度が少ないと、工賃も低くなる傾向があります。安定した通所と積極的な作業参加が、工賃を上げるポイントです。

なお厚生労働省では、B型作業所の工賃水準を底上げするため、平均月額工賃3,000円以上を「指定基準」に盛り込んでいます。これを下回らないように、各事業所に求めています。

参考:厚生労働省|令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要

B型作業所の給料(工賃)相場

B型作業所を利用する際、どのくらいの工賃が得られるのかは、多くの方が気になるポイントです。ここでは、下記の項目ごとに工賃について解説します。

  • 全国平均の月額・日額工賃
  • 1時間あたりの工賃目安
  • 地域や業種による格差

詳しく見ていきましょう。

全国平均の月額・日額工賃

厚生労働省の「令和5年度 工賃(賃金)の実績」によると、就労継続支援B型の全国平均月額工賃は23,053円です。前年度(令和4年度)の平均17,031円と比較して、大幅な増加が見られました。

この上昇には、令和5年度から一部の調査集計方法が変更されたことも影響しています。しかし、全国的に工賃水準の底上げが進んでいるのは事実です。

1日あたりに換算すると、1,000円前後が平均的な工賃額です。数値はあくまで全国平均であり、実際の金額は下記のような要素によって変動します。

  • 地域の物価水準・産業構造
  • 事業所の生産活動内容と利益
  • 利用者の通所日数や作業時間

工賃の原資は事業所の売上に依存するため、作業の収益性や稼働率が高い事業所ほど、工賃が高くなる傾向です。

参考:厚生労働省|令和5年度工賃(賃金)の実績について

1時間あたりの工賃目安

B型作業所の1時間あたりの平均工賃は、およそ243円~250円です。この金額は、令和6年度の全国加重平均最低賃金1,004円と比べても、約4分の1程度にとどまります。

B型作業所の工賃は、一般的な労働の対価というよりも、福祉的な支援の一環として支払われています。

工賃の支給方法は事業所ごとに異なり、時給制・日額制・出来高制などが一般的です。そのため、同じ時間働いていても得られる工賃が変わることもあります。

制度上、工賃は生活費を補うための補助的な収入とされており、これだけで生活をまかなうのは現実的に困難です。B型作業所は収入の確保よりも、就労準備や生活リズムの安定といった「段階的な支援」に重点を置いている点に注意が必要です。

参考:厚生労働省|令和5年度工賃(賃金)の実績について

厚生労働省|地域別最低賃金の全国一覧

地域や業種による格差

厚生労働省「令和5年度工賃(賃金)の実績について 」によると、都道府県別の平均月額工賃は、下記のとおりです。

  • もっとも高い:徳島県29,312円
  • もっとも低い:大阪府18,176円

このように、約1.6倍の格差が生じています。

さらに、行っている業務の種類によっても工賃に差が出ます。自主製品の製造・販売やカフェ運営など、収益性の高い事業を行っている作業所では、工賃が高くなる傾向です。

一方で、単価の低い下請け作業や単純な軽作業が中心の事業所では、月額1万円台にとどまるケースも。こうした実態からも、地域差だけでなく、業種による収入格差にも注意が必要です。

2024年度の障害福祉サービス等報酬改定による賃上げについて

2024年度の障害福祉サービス等報酬改定では、物価上昇や人手不足への対応がおもな目的とされました。この対策の一環として、障害福祉サービス全体の基本報酬が平均+1.12%引き上げられています。

中でも注目されたのが、新たに創設された「ベースアップ評価加算」です。この加算は、介護職と同様に、障害福祉分野の職員の処遇改善を図るために導入された制度です。就労継続支援B型などの事業所も、対象となります。加算率は、下記のとおりです。

  • 2024年度:+2.5%相当
  • 2025年度:+2.0%相当

あくまで「職員の賃金改善」を目的とした制度であるため、利用者が受け取る工賃に直接反映されるわけではありません。実際に工賃にどの程度還元するかは、各事業所の運営方針や収益状況により異なるでしょう。

そのため、報酬改定によって事業所の収益が改善されても、すべてのB型事業所で工賃アップが行われるとは限らないのが現状です。

参考:厚生労働省|令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容

B型作業所の給料(工賃)が低い3つの理由

B型作業所では、月額1~2万円前後という工賃水準が一般的です。「なぜこれほど低いのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。

この背景には、下記3つの要因があげられます。

  • 労働基準法が適用されない
  • サポート重視で作業効率より福祉を優先
  • 単価の低い軽作業・下請け業務が中心

詳しく解説します。

1.労働基準法が適用されない

B型作業所は「非雇用型支援」とされており、利用者は事業所と雇用契約を結ばない立場です。そのため、労働者とみなされず、下記のような法的保護の対象外となります。

  • 最低賃金法
  • 労働基準法(労働時間・休憩・残業手当など)

このため、たとえ最低賃金を下回っていても違法にはならず、報酬は「給料」ではなく「工賃」として支給されます。法制度上の制約によって、報酬水準は低くなりがちです。

2.サポート重視で作業効率より福祉を優先

B型作業所は、障害のある方にとって「働くことそのもの」よりも、次のような生活支援的な役割を重視しています。

  • 生活リズムを整える
  • 社会とのつながりを持つ
  • 自己肯定感や意欲を育む

利用者の多くは、体調や精神状態に波があり、毎日決まった時間に働けるとは限りません。無理のないペースで作業を続けることが重視され、生産性の向上よりも個別支援が優先されます。

このような福祉的配慮が、工賃の金額にも影響しています。

3.単価の低い軽作業・下請け業務が中心

B型作業所で行われる作業には、下記のような軽作業が多くあります。

  • 封入作業・袋詰め
  • タオル折り・シール貼り
  • 組み立て部品の検品

これらの業務は、市場単価が極端に低いうえ、下請けとしての立場で請け負っていることが多いため、収益性が限られています。「1個あたり数円」程度の単価で受注する作業もあり、どれだけ数をこなしても収入には限界があるでしょう。

また、自主製品の開発や店舗運営など、比較的高い収益が見込める事業を展開しているB型事業所は、まだ一部にとどまります。

B型作業所でも収入を増やす方法

B型作業所でも収入を増やす方法は、下記のとおりです。

  • 作業日数・時間を増やす
  • 工賃の高い事業所を探す
  • 工賃向上計画などの取り組みを行う施設を選ぶ
  • 自分のスキルや得意を活かせる作業内容に挑戦する

チェックしてみましょう。

作業日数・時間を増やす

B型作業所では、1日の作業時間が2〜4時間ほどに設定されているのが一般的です。そのため、通所日数や作業時間が少ないと、工賃も低くなる傾向があります。

下記のような取り組みを行うと、工賃アップにつながる可能性があります。

  • 週あたりの通所日数を1日増やす
  • 作業時間を30分〜1時間延ばす
  • 体調管理や生活リズムの安定を図る

時間延長や追加日の調整にも柔軟に対応してくれる場合もあるため、支援員に相談してみましょう。

工賃の高い事業所を探す

B型作業所の工賃は、事業所によって大きな差があります。工賃が高くなりやすい事業所の特徴は、下記のとおりです。

  • クリーニング・弁当製造・EC販売など単価が高い作業がある
  • 焼き菓子や革製品などの自主製品を展開している
  • オンラインショップや地域イベントなど販路拡大に積極的である

見学・体験も活用しながら、自分に合った施設を探しましょう。

工賃向上計画などの取り組みを行う施設を選ぶ

国では、B型事業所の収益改善と工賃アップを目的に、「工賃向上計画」の策定を推奨しています。この計画に積極的に取り組んでいる施設では、次のような取り組みが見られます。

  • 作業工程や生産体制の見直し
  • 外部との取引拡大や営業活動
  • 商品開発・EC販売などの販路拡大

こうした事業所では、職員全体が「工賃アップ」を目標に支援しているため、利用者も安定した収入増が期待できるでしょう。

自分のスキルや得意を活かせる作業内容に挑戦する

B型作業所では、利用者の特性や得意分野に応じた作業の提供が可能です。自分のスキルや関心がある分野に合った作業を選ぶことで、作業効率が上がり、結果的に工賃アップにつながります。

下記のように、自分の得意分野を職員と相談しながら探ってみましょう。

  • 手先が器用な方:製品組み立て・袋詰め・縫製など
  • 人と関わるのが得意な方:カフェ接客・清掃業務・販売補助など
  • 集中力がある方:データ入力・封入作業

また、自分に合った作業を見つけられると、やりがいや達成感も得られるため、通所の継続にもつながりやすくなります。

まとめ:B型作業所の工賃を正しく知り、無理なく収入を増やそう

B型作業所の工賃は、一般的な給料とは異なります。「福祉的支援の一環」として支給されるため、月1〜2万円台が平均です。

しかし、作業時間の増加や工賃の高い事業所の選択、自分のスキルを活かした作業の工夫などによって、収入を増やすことも可能です。まずは制度の仕組みや地域の実情を正しく知り、自分に合った働き方を見つけましょう。

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